COLUMN

コラム

【令和6年7月の不動産仲介手数料改定:空き家問題解消に向けた新たな一手】

背景:増え続ける空き家問題

日本では少子高齢化や人口減少に伴い、特に地方部で空き家の増加が深刻な問題となっています。総務省の統計によれば、2023年時点で空き家数は約849万戸に達し、今後も増加が予想されています。

空き家は放置されると防災面や衛生面でのリスクとなるだけでなく、地域の景観悪化や資産価値の低下にも繋がります。こうした問題を是正し、有効活用するために国や地方自治体はさまざまな施策を講じてきました。

改定の狙い

令和6年7月に実施された不動産仲介手数料の上限引き上げは、特に800万円以下の低価格帯物件の流通を促進することを目的としています。低価格帯の物件は仲介業者にとって手数料収入が少なく、取り扱いに消極的になりがちでした。今回の改定により、仲介業者がより積極的に低価格物件の取引に取り組むことが期待されています。

具体的な改定内容

これまでの不動産仲介手数料は、物件価格に応じて段階的に設定されていました。しかし、800万円以下の物件に対しては、新たに「最大33万円(税抜)」の上限が設けられ、これにより業者が安定した収入を得られるようになりました。

政策の影響と期待される効果

この改定により、以下のような効果が期待されています:
 1. 空き家の流通促進: 仲介業者のインセンティブが高まることで、これまで取り扱いが敬遠されていた低価格帯の空き家が市場に出やすくなります。これにより、空き家の有効活用やリノベーションが進み、地域の活性化に繋がります。
 2. 地域経済の活性化: 空き家が新たな住宅や商業施設として活用されることで、地域経済の活性化が期待されます。特に地方部では新たな住民の呼び込みや、地域コミュニティの再生にも繋がるでしょう。
 3. 不動産市場の安定化: 流通量が増えることで不動産市場全体の流動性が高まり、価格の適正化や市場の安定にも寄与することが見込まれます。

今後の展望

この政策は、今後の不動産市場や地域社会にポジティブな影響を与えることが期待されています。特に空き家問題が深刻な地域では、この改定を機に空き家の有効活用が進むことで、地域の魅力向上や新たなビジネスチャンスの創出が期待できるでしょう。

懸念される価格への影響

埋もれていた物件が市場に多く出回ることで、以下のような価格への影響が考えられます。
 1. 供給の増加による価格の下落:
 市場に流通する物件が増えることで、需要と供給のバランスが変わり、特に過疎地域などでは価格が下がる可能性がある。
 2. 低価格物件の競争激化:
 低価格帯の物件が増えることで、購入者にとって選択肢が広がり、価格競争が起きやすくなる。これにより、物件価格が全体的に下がる可能性もある。

トレードオフの現実

こうした状況は、まさに一長一短といえるでしょう。空き家問題の解消と地域活性化を目指す中で、一定の成果が期待される一方、新たな課題も生まれる可能性があり、常にバランスを取りながら対応していく必要があります。今後も柔軟な施策の見直しや調整が求められる中で、どのように最適な解を見出していくかが鍵となるでしょう。